30秒でわかる、日本の法律の現在地
| 親子関係のルール | ある。生殖補助医療特例法(2020年成立)が母子・父子関係を規定 |
| 治療の実施ルール | まだない。だれがどんな治療を受けられるかを定める法律は未制定 |
| 出自を知る権利 | まだない。法案は2025年に国会提出されたが、審議されないまま閉会 |
ご夫婦の場合:親子関係は法律で守られている
2020年に成立した「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(生殖補助医療特例法)が、二つの大切なルールを定めています。
| 第9条(母子関係) | 第三者の卵子を用いた生殖補助医療で子を出産した場合、出産した女性がその子の母になる |
| 第10条(父子関係) | 妻が夫の同意を得てドナー精子による生殖補助医療で妊娠した場合、夫はその子が嫡出であることを否認できない=法律上の父になる |
実務上のポイントは「夫の同意」です。第10条の保護は、夫が治療に同意していたことが前提になります。同意は治療前に、書面で、内容を理解したうえで——これが、あとから親子関係が争われる余地をなくす、いちばん確実な備えです。海外での治療でも、同意書面を残しておく意味は同じです。
ソロ女性の場合:シンプルだが、確認事項がある
ソロ女性がドナー精子で出産した場合、出産した本人が母になります(これは民法の原則どおりです)。法律上の父は存在しない状態で戸籍が編成され、母子の親子関係そのものに不安定さはありません。
確認しておきたいのは周辺の実務です。①海外で出産する場合の出生届・国籍の手続き、②将来ドナーとの法的関係が問われる可能性の整理(利用したしくみの同意書・契約内容の確認)、③子どもへの説明の材料を残すこと。とくに①は国によって手順が異なるため、渡航前の確認をおすすめします。戸籍・出生届のこともあわせてご覧ください。
女性カップルの場合:個別性がもっとも高い
特例法の父子関係ルール(第10条)は「夫の同意」を前提とした、ご夫婦の枠組みです。女性カップルの場合、出産した方が母になる点はソロ女性と同じですが、産んでいない側のパートナーと子どもの法的関係は、現行の日本法では自動的には生じません。パートナーシップ制度の有無、養子縁組の可否、治療した国での法的位置づけなど、状況による個別性が非常に高い領域です。
ここは一般論でお伝えするのが不誠実な領域だと私たちは考えています。確認すべき項目を一緒に整理したうえで、家族法にくわしい専門家(弁護士等)への確認をご案内します。
「出自を知る権利」——法律はまだ、議論は進行中
ドナー情報の保管・開示のしくみを定める法律は、日本にはまだありません。経緯を時系列で整理します。
| 2020年12月 | 特例法成立。ただし出自を知る権利は「検討課題」として先送り |
| 2025年2月 | 「特定生殖補助医療に関する法律案」が参議院に提出される。ドナー情報を公的機関で100年保管し、子どもが成人後に一定の情報開示を請求できる内容 |
| 2025年6月 | 実質的な審議が行われないまま国会閉会。法案は成立せず |
| 現在 | 法制化の議論は継続中。制度がない以上、備えは「しくみ選び」でつくる段階 |
制度を待つあいだにできる備えは明確です。ID開示(オープン)ドナーを選ぶこと。記録を残すこと。告知を前提に考えること。この三つは、将来どんな法律ができても価値を失いません。くわしくは解説記事とドナーの選び方をご覧ください。
海外で治療する場合の、二段構えの確認
海外治療では、確認が二段になります。①治療国の制度——ドナーの匿名・開示ルール、対象者の要件、親子関係の扱い。②帰国後の日本の手続き——出生届、戸籍、(状況により)国籍。この二つは別物で、片方だけ確認して進めると帰国後に慌てることになります。国選びの段階から法的視点を入れておくのが、結局いちばんの近道です。国別の制度とあわせてご覧ください。
相談前チェックリスト
- (ご夫婦)夫の同意を、治療前に書面で残す準備はあるか
- 検討中のドナーのしくみで、同意書・契約の内容を確認できるか
- 治療候補国の親子関係ルールと、日本での出生届手続きを両方確認したか
- (女性カップル)産まない側のパートナーの法的関係について、専門家に確認する予定はあるか
- 子どもに将来説明するための記録を、どう残すか決めたか
参考:生殖補助医療特例法(令和2年法律第76号)第9条・第10条、国会提出法案資料(2026年7月確認)。本ページは教育・情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士等の専門家にご相談ください。
法的な確認事項も、一緒に整理を。
チェックリストの項目を、あなたの状況にあわせて具体化します。必要に応じて専門家への確認もご案内します。